子供のCT検査は被曝というリスクも考えよう

こんにちは、くらげプロです。

診察していると、子供が軽く頭を打ったというだけで「CTを撮ってほしい」と家族から希望されることがあります。

こちらとしても診るまでは大丈夫か?と心配になりますが

・・・

診察室に自分で歩いて入ってきて、遊んでるね!

という軽症患者。

診察をして、「CT検査まではいらないでしょう。」と言ってもなかなか納得しない家族がいます。

CT検査は頭の中の出血を見つけるのに有益な検査で、日本は世界一CT検査機器の台数があり、かつ自己負担少なく撮れます。本当にありがたいことです。

一方で、不必要な検査が多いです。

CT検査をするということは放射線被曝というマイナスなこともあると説明してるのに、不安なだけでCT検査を希望されます。

(当然、丁寧な診察と説明をしたうえで納得される方もいますが、半数以上は「でもやっぱりCT撮ってくださいと言われます。」)

もちろん「何かあったら…」と不安になる気持ちもわかりますので、リスクを知ったうえで検査するという選択をするのであれば、それは良いと思うのですが。

ゼロリスクではないということ

それを検査前確率も検証せず、さらに説明しようとしない医師の態度が、不適切な検査が増える理由でしょう。

今回は、子供に対するCT検査の新たな知見と、軽症の頭部外傷にCT検査の選択についてまとめてみました。

子供のCT検査で脳腫瘍リスクが上昇

Medical Tribune 誌(2018年8月6日付)に以下のような記事がありました。抜粋改変

『小児期のCT検査で脳腫瘍リスクが上昇』
オランダがん研究所のJ.M.Meulepas氏らは、1979~2012年にオランダ国内の病院で1回以上CT検査を受けた18歳未満の16万8394例を対象に後ろ向きコホート研究を行った。脳の累積吸収線量は平均38.5mGyで、良性と悪性を合わせた全脳腫瘍リスクと優位に関連していた(100mGy辺りの過剰相対リスクERRは0.86, 95%CI 0.20~2.22, P=0.002)。また線量反応関係が認められた。

元ネタの論文はこちらですね。

Radiation Exposure From Pediatric CT Scans and Subsequent Cancer Risk in the Netherlands.  J Natl Cancer Inst 2018 Jul 18.

過剰相対リスクについての説明ですが、「100mGyの線量を浴びた人は浴びてない人に比べて、脳腫瘍の発生が86%増える。」ということです。

一回のCT検査で受ける組織吸収線量は10~100mGy(ICRPpublication87 CTにおける患者線量の管理より)。

ちなみに、グレイ(Gy)は、放射線が物質に当たったときにそのエネルギーが物質にどれだけ吸収されたかを表す単位で、シーベルト(Sv)は人体が放射線を受けたとき、その影響の度合いを表す単位です。

本当はそれぞれの臓器ごとに実行線量Svの計算する必要があります。が、上記論文はGy当たりで腫瘍発生なので、Sv変換する必要ないですね。

放射線被曝の影響については、かなりな部分があり、さらに私の文系頭ではあまり突っ込まれると困ります。

しかし、前項の論文だけがCT検査のリスクを指摘しているわけではなく、CTを中心に医療被曝についての疫学研究は質量ともに増えてきており、発がんリスクが懸念される結果となっています。

CT検査のリスクと適用の考え方とは?

医療における放射線のリスクについては議論あるものの、以下のことにより、より慎重に適応を考える必要があります。

・しきい値(影響の出る最低線量)以下はわからないのであって、リスクがないわけではない

つまり、医療被曝を最小限にするほうが良い。これはICRPに則って、低線量被曝でもゼロリスクではないという立場に立つ。

・被曝の影響はすぐ目に見えるわけではないので過小評価しがち。

「そのCT検査のせいで何10年後に何万人に数人ガンが増える。」とか言われてもピンとこないですよね。

ただ、日本のがんの2%ほどはCT検査をはじめ医療被曝で起きるという研究もあり、日本国民全体で考えるとすごい数です。

それが起きるのが目の前の子供じゃないということは言えません。

ただ、現実としては以下みたいな感じなんですよね。

親は心配で撮ってほしいし、医者は「じゃぁ撮りましょうか」って言って撮れば、一人にかける時間も減らせるし、自分も安心、そして親からは感謝される。さらには病院の収益にもなる。

つまり

⇒ 無駄なCT検査を減らそうというインセンティブが働かない。

困ったもんです。

事実、行われたCT検査の3分の1が必要なかったという研究結果もあるくらいです。

では、元気そうな子供では、どのようなときに頭部CT検査の適応があるでしょうか?

軽症頭部外傷の子供でのCT検査の考え方

有名でわかりやすいのはこちらでしょう。

Lancet 2009;374:1160-70. 

Identification of children at very low risk of clinically-important brain injuries after head trauma: a prospective cohort study

こちらを邦訳してまとめてくれてるのがこちら。

日経メディカルCadetto.jpで2012年01月12日の林寛之先生の記事から図5を引用。2歳未満だけなのが残念。

林先生が記事に書かれているように、結局「医師の裁量」「親の希望」が適用の判断に入っているというのはどうなんだとも思うものの、左側になにもなければ重要な脳損傷は0.02%と言えるのは大きい。

また英語にはなりますが以下のサイトで参照できます。あと入力していくと結果を家族に提示できます。

The PECARN Pediatric Head Injury/Trauma Algorithm provides the PECARN algorithm for evaluating pediatric head injury.

便利ですね。

私は、軽症の子供になんでもかんでもCT検査が不要と言いたいわけではありません。

どうしても不安だから撮ってほしいという希望に医者が沿うことも大事でしょうし、自分の子供なら心配でたまらなくCT検査してしまうかもしれません。

大事なのは、患者・家族もこういう情報を知っていて選択してほしい。医療はなんにでもメリット・デメリットがあります。

「リスクを知ったうえで自分で選択する」

これが大事です。

まとめ

軽症の頭部外傷の子供で簡単にCT検査を家族から頼まれることがありますが、CT検査には放射線被曝のリスクがあります。健康に影響があるかどうか議論がありますが、最新の疫学研究でも腫瘍リスクがありました。

どのようなときに頭部CT検査をしたらよいのかという研究もあります。これらの客観的なデータを知っているうえで、リスクと有益さを天秤にかけて、自分で判断することが大事です。

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