みんなが知らない健康診断の注意点!そのリスクとは??

こんにちは、くらげプロです。

一般の会社では毎年1度は健康診断があると思います(法律で決められています)。

健診の1週間前からお酒を止めているとか、食べる量を減らしているとかの話も聞きます。

多くの方が体重や血液検査の数値など、結果がどうかを気にしています。

しかし、そのような個別的な医療問題はおいといて、この健康診断という制度自体で様々な勘違いが多いです。

そして、健康診断に関する勘違いを知らないと思わぬリスク(労働者も事業者も)があります

今回は、ちょっとマイナーですが、多くの方に関係する話として「健康診断の注意点」について述べていきます。

健康診断の結果を見る目的が違うことに注意

健康診断を何のためにやるのか?ということはご存知でしょうか?

当然みなさん、「健康かどうかみるんだろ?」と答えられると思います。

それは確かにそうなのですが、見る立場によって目的が違います。

まず、健康診断を受けたところの医者が結果を見て医療的な判断をしています。

そして、事業所内では、私のような産業医が従業員の健診結果を見て、もう一つの判断をしています。

この違いは

前者の健診機関の医師が判断するのは『医療判定』
後者の産業医が判断するのは『就業判定』

とも言います。

前者の医療的な判定は診断区分とも言いますが、実施機関によって文言は異なります

『異常なし、経過観察、要再検査、要精密検査、要治療、継続治療(治療中)』

等が多いでしょうか。

これは結構みなさんが気にして見てらっしゃると思います。

ちなみに、この文言について「どういう意味でしょうか?」と聞かれることもあるのですが、その文言はそれぞれの実施機関に聞いてくださいと(もちろんその検査結果についての見解は述べます)。

法律論で言うと、本質的な医療契約は労働者と健診実施機関の間でなされていると解釈されます。

一方、後者の産業医が見ているのは、

「血糖が高いな」とか「血圧が高いな」

と言った医学的なことももちろん見るのですが、一番の目的は

この健康状態で就労に支障があるかないか、もしくは健康状態が悪化しないかを判断します。

これは就業上の判定区分と言われ、

『通常勤務可、就業制限、要休業』

と結果を出します。これは通常勤務可であれば本人に知らされないことが多いです。

これが、「医者が2回見て、通常勤務可ってことは健康ってことだろ?」と思ってませんか??

そのような認識だと大変問題です。

通常勤務可=健康というわけではない

時々、労働者からも事業者からも、

「健診結果で要再検査となっていたけど、産業医から通常勤務可として何も言われていないから大丈夫と思ってた。」

と言われて驚くことがあります。

前述の通り、見ている目的が違うので、単に健診実施機関の医師と産業医がダブルチェックをしているわけではないのです。

例えば健診で、特に40歳以上の人に、便潜血という便の中に血液が混じっているかどうかを調べる検査をしていることがあります。

これは大腸がんの可能性があるかどうかを調べるスクリーニング検査になります。

大腸がんは男性3位、女性1位と多いがん(2018年国立がん研究センター調べ)で、40歳以降に増えてきます。

大腸がんは初期症状として便に血液成分が混じることがあるので、陽性であれば内視鏡などの精密検査をして理由を調べることが大事です。

なので、便潜血が陽性であれば、医療判定は『要精密検査』となります。

しかし、無症状で便に血が混じっているだけの人で、就労に支障があると思いますか??

便潜血陽性ということだけだと、単なる痔の人もいれば、他の炎症性腸疾患の可能性もあります。可能性の一つとして大腸がんもあるだけで、それは精密検査をしないとわかりません。

つまり、この時点では就労に支障なんて無いです!

なので、産業医の就業判定は『通常勤務可』となります。

これを単なる医師のダブルチェックと認識していると、「産業医は健診結果を見ても何も言ってこなかったし、大丈夫だろう」などと勘違いしてしまう可能性があります。

その結果、早く精密検査していれば大腸がんの早期発見ができたかもしれないのに、勘違いのせいで発見が遅れる可能性があります。

事業者は労働者に『必ず健診結果の医師判定の通りにしてくださいね』と周知しておく必要があるのがお判りでしょうか?

健康診断の法定外項目を検査することのリスク

もう一つ健康診断によるリスクについて紹介します。

健康診断の検査項目というのは、法律で決まっています。これを法定項目と言います。

これだけやっていれば良いのですが、それ以外の項目を追加していることも多いです。

それを法定外項目を追加していると言います。

法定項目だけだったり、法定外項目でも本人の希望で追加しているのであればまだいいのですが、

事業者が法定外項目を追加していることが多いです。

前述した便潜血もそうですし、腫瘍マーカーと呼ばれる血液検査項目や内視鏡や乳がんマンモグラフィーなどやっているところもあります。

労働者側からすればやってもらえるならありがたいと思う方が多いかもしれません。

事業者側も、労働者に良かれと思ってやっていることが多いです(福利厚生の一環)。

さて、ではどのようなリスクがあるでしょうか??

事業者の安全配慮義務が拡大するおそれがある

安全配慮義務ということが事業者に課せられています。(労働契約法第5条平成十九年)

①社員が心身の健康を害することを会社が予測できた可能性(予見可能性)があり、

②それを会社として回避する手段があったにもかかわらず(結果回避可能性)、

適切な手段を講じなかった場合に、安全(健康)配慮義務違反に問われる。

ということです。

本来は知らなくても良かった法定外項目まで検査して、それを知っているならば、上記の①を満たしていることになります。

もし、労働者に健康診断にまつわる何らかの不幸があり、事業者として結果回避可能性があるならば、安全配慮義務違反に問われる可能性があるのです。

そういうことまでしっかりと考えて法定外項目を検査項目にしているのでしょうか?

やる義務がない健診項目だということを労働者は知っているか?

私が契約している事業所でこんなことがありました。

そこではある年齢以上の女性に乳がん検査のマンモグラフィを健康診断でやっています。

乳がんのマンモグラフィは法定外項目です。

私は「本来検査する義務はないのですが、それだけに個人情報として管理をしっかりしないといけないですが、どうされてますか?」

と対応をしてくれている総務部の方(女性)に聞いたのです。

するとその女性は、「え?検査する義務はないって?やらなくていいのですか??」と驚かれました。

そこで、法定項目と法定外項目について説明をしたところ、その女性はこうおっしゃいました。

「会社がお金を負担してくれて検査ができてありがたいけど、結果が良くても悪くてもなるべく会社に知られたくないです。」

と。

昨今の個人情報について厳しくなってきている中で、最大の個人情報である健康問題を知られなくてよいのであれば知られたくないと考える人がいても不思議ではありません

そのようなことまで考えて法定外項目を健診に追加していますか??

まとめ

健康診断について事業者も労働者も勘違いしていることが結構あります。

それを知らないことで、事業者も労働者もリスクがあります。

このようなことは本来産業医が言うべきことではないのですが、あまりにニッチな分野で誰も気にしていないのかもしれません。

しかし、かつてのような事業者と労働者の緊密な関係性が薄れ、個人情報も厳しくなってきている中で、健康関連のことは法的リスクに繋がります。

産業医は医者の目線だけでは今後ますます会社組織の在り方と隔たりがでてきます。

私は、弁護士とも協議しながら、今の産業医業務につなげています。

今後益々、このようなリスクが実際に問題となり、顕在化しないか心配です。

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