2夜連続で老衰の方を看取ってふと考えた

こんにちは、くらげプロです。

つい先日、2夜連続で亡くなった方の看取りをして死亡診断書を書いたのですが、お二人とも老衰でした。

お二人ともクリニックの隣にある老人保健施設の方で、もうぼちぼちでしょうとご家族の方にも説明をしていたので、粛々とお亡くなりの連絡や確認などをして、お見送りできました。

正直、

当直 ⇒ 朝から晩まで外来 ⇒ 当直

の連続勤務だったので、初日の夜中にお亡くなり、睡眠不足で一日外来やった後の夜中にまたお亡くなりだったので、お二人目の時は睡眠不足でフラフラでしたが、こればっかりはしょうがありません。お互いに。

ということで、2夜連続で死亡診断書に「老衰」と書いたのですが、何気に初めてのことでした。もちろん、在宅医療を中心にされてる医師などはいつものことなのでしょうが、私のような非常勤医で、しかもあちこちで働いているフリーランス医としては珍しいです。高齢化でこれから増えてくるであろう老衰についていろいろ考えてみました。

そもそも「老衰」ってなんだ?

「老衰」というのは、「老い衰えていって死ぬのだ」と、おそらく皆さん感覚としては理解してると思います。

医師としてもおよそ同じです。ちなみに、きちんと死亡診断書の書き方を習うことはありません。働き出して、診断書を書く機会ができたときに上級医・指導医から教えられる感じです。

もちろん、何かの病気やケガで入院していて亡くなったとなると、それが死因となります。ただ、若手の時には大きい病院で働いてるので、なかなか老衰の方に出会うことがありません。

私の一番最初の老衰の方との出会いは、1年目の内科研修の時に90代半ばで肺炎で入院されてた方ですが、私が教わっていた上級医の方が「これは、老衰としか言えないな。。。」とつぶやきながら診断書に記入していたのをはっきり覚えています。それ以後は数年間、老衰の方に会うことはなかったです。

老衰の基準とは?

人間は、酸素が脳に行かなくなったら終わりです。肺で酸素を取り込み、心臓で脳に送る。つまるところ、この機能が正常に作動していれば問題ありません。機能が正常でなくなる理由が「老化」が中心である場合が「老衰」と判断されます

しかし、その判断基準は多分に恣意的です。

死因として、「認知症」というのもあるのですが、高齢になると認知機能が衰えていくのは当然です。また、物を飲み込む機能、嚥下機能が衰えて肺炎を起こす人も多いです。もっと複雑に(現実こういうことの方が多いですが、、、)、肺がんの方で認知症があり、ずっと痰がゴロゴロしている人が亡くなった場合、死因が「肺がん」なのか「認知症」や「老衰」なのか判断がつきづらいです。

あくまで私の場合ですが、老衰か他の死因か迷う場合は、

およそ年齢的なもの(80歳程度以上)と、緩徐な経過であるということ、そして家族がどう感じているか。

で判断しています。

一つ目二つ目はいろんな老衰の記述例に書いてありますが、三つ目の「家族がどう感じているのか」ということは自分独自に考えてできました(どこかでそのように書いてあるかもしれませんが見たことはありません)。

わかりやすい例では、在宅での死亡の場合ですかね。この場合、ご家族の気持ちの中で「死への受容」ができていることが多く、また「最後まで看取りたい」という希望があります。老衰という死因はご家族が納得し、やりきった感覚を持ちやすいと思います。

一方、どれだけ老化現象と言えども、治療してできるだけ長生きしてほしいと入院を希望するご家族もいます。正直、多少の延命にしかならずにご本人は苦しいのではないかと思えることもありますが、病院に連れてくるご家族は「死への受容」ができていないことが多いです。「老衰」という言葉は知っていても納得できないのです。そのようなご家族はなんらかの病名ですっきりすることがあります。

そのようなご家族の「死への受容」の程度によって判断することがあります

所詮、死亡診断書の死因は国の統計で使うというだけなので、それよりは文字一つでご家族の気持ちが少しでも違うならそちらの方が重要と考えています。

老衰で亡くなる人は増えているのか?

私が医者になった10数年前と比べて、老衰が増えている気がします。実際どうでしょうか?

厚生労働省によって死亡原因の統計は出ているのですが、羅列してあるだけで全然ユーザーファーストじゃねぇなとどうするか困りましたが、「多種多様な情報を紹介・図式化・解説するサイトである」ガベージニュースさんがグラフ化してくれてましたので拝借いたします

先に【主要死因別に見た死亡率をグラフ化してみる】において、厚生労働省が発表した人口動態調査における人口動態統計(確定数)の2016年版の値の概況(【発表ページ:平成28年(2016)人口動態統計(確定数)の概況)】)を元に、主要死因別に見た死亡率の動向を確認した。その中で附

これはなかなか興味深いグラフです。

戦後に一気に老衰が減っており、この10年で急速に増えています。2018年まではグラフにありませんが、2015年よりもう少し増えているでしょう。解釈するに、

戦前まではまず入院での死亡というのが一般的ではないということ、検査機器が発達しておらず原因がわからないというので老衰が多いと考えられます。

戦後からは高度経済成長と医学の進歩で、病院数の拡大、寿命増加に加えてガンや心筋梗塞など病気も増加して、老衰が減っていく。

近年の老衰の伸びは、国として在宅医療の推進と、医療の発達で病気の治癒が進み、寿命の延びに追いついたというところでしょう。

日本は医療費に直結している保険点数の増減によって、国が意図するように医療の流れを決められます。つまり在宅医療に加算を手厚くすれば、在宅医療が儲かるのでやる医者が増えるのです。その是非はともかく、現在はまさしくそのようになっています。

どこでどのように死んでいくかということが、ようやく表立って議論できる世論が醸成されたことも影響しているでしょう。今までは、とかく死について話すことが憚られる雰囲気がありましたが、在宅医療の推進で選択肢ができてきました。

ちなみに、老衰で亡くなるには、それまでに心筋梗塞などの重い病気や交通事故などの死に直結することに出会わなかったということです。それは、まさしく「大往生」ということで羨ましくあります。

まとめ

近年は在宅医療の推進によってより穏やかな死ということが議論されるようになってきました。老衰という死因は恣意的な部分もありますが、判断に迷うというだけ、医療の発展により病気が治癒しているということと繋がっています。

老衰で亡くなる方は増えており、自分もそうありたいものです。

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