医師の残業上限2000時間!個人犠牲の上に立つ医療システム!

こんにちは、くらげプロです。

近年、長時間残業による弊害が社会化し、国が主導で働き方改革が進められております。

私も産業医で様々な企業に足を運んでいますが、国からのトップダウンの指示で現場は混乱してるのを目にします。

それでも、労働効率を上げる、長時間労働を改善する、というのに今の半強制的なやり方は良いと思ってます。

そんななか先日、厚生労働省から、医師の残業の上限を「年2000時間」にする制度案が示されました。

残業で年2000時間までOK?国がそれを言うな!

いやぁ、びっくりですね。残業による過労死は月80時間超えていればまず100%認定されます。

年2000時間の上限ということは月当たりで167時間です。

医師は普通の人間と同様の扱いを受けないということが判明しました。

確かに、私が大きい病院にいたときは当直の日や翌日は通常に働くため、連続36時間勤務なんて当たり前でした。

しかも、労働基準法における宿直というのは、通常の勤務はしてはいけません。


勤務の態様

・常態としてほとんど労働する必要のない勤務
・原則として、通常の労働の継続は許可しない


医師の宿日直勤務と労働基準法 平成17年4月厚生労働省労働基準局監督課

しかし、大きい病院の当直などは通常に夜間外来、救急受付しますので、2時間寝られたらラッキーくらいで、それで尚且つ、翌日に手術したりします。

みなさん、執刀する医者が24時間以上寝ないで連続勤務している状態なんて思わないでしょう? これがあるのが日本の医療です。

これを端的に言いましょう。

不備な医療システムを、医師と患者がリスクを負っていることで補完されているんです!

百歩譲って、医師は私みたいに現医療システムから逃避することも可能で、選択できます。でも、患者さんは医者を選べないですからね。

患者さんがそんな状況を知らないのをいいことに、ずっと昔からこの医療システムなんだから先輩たちは今まで何を考えてたんだと怒りを感じます。

他の医療スタッフは帰って医師が代りに入る

10年ちょっと前に大学病院では、長時間に及ぶ手術があると、夕方5時に手術についてた看護師がみないなくなってました。

代りに入ってきたのは医局の若手の医者で、看護師の代りをやってました。

看護師は労働組合がしっかりしていて労働時間に厳しいと。でも、手術には器械を出す人や外回りと呼ばれる看護師が必要です。看護師は帰らなければいけないので、代わりに入るのは医師というわけです。

なんだそりゃ、でしょう? 代わりに入る医師も日中働いた後ですからね。

いかに、医師という職業が労働者としてみなされていないか。

実際、私が医学生の頃に教わった教授(現在は学長)は「医師は労働者の権利なんてない」とはっきり言ってました。今はまだ学長にいるようですが、どんな教育をこのご時世しているんでしょうね。

応召義務なんて理由にならない

医師がみんな通常の休みをとると患者はどうするんだ!医師は求めに応じて患者を診なければいけないと法律にあるぞ!

という人がいますが、医師法第 19 条に定める応召義務なんて、残業規制を設けることを妨げるなんら理由づけにならないです。

応召義務の法的意味付けは以下の通りです。

応召義務は、医師法に基づく医師が国に対して負担する公法上の義務で あるが、刑事罰は規定されていない。また、私法上の義務ではなく、医師が患者に対して直接民事上負担する義務ではない(本規定を直接の根拠に患者に診療を求める権利が生ずるものではない。)。

厚生労働科学研究

以前、自分も弁護士と話していて、

「自分が診れない場合は開いている病院を受診するように紹介するだけで応召義務は果たしている」

と教えられたことがあります。

医療システムの問題は何か?解決策は?

なぜこんな無理のある医療システムになっているのか、原因を医師不足という人が多いです。

しかし、本当にそうでしょうか?

確かに日本はOECD35か国中30位とのことで、 各国平均に比べると2/3程の医師数とのことです。

それよりも問題なのは病院数(病床数)が多すぎ、さらには在院日数が多いことです。

日本の医師数はアメリカやイギリスと大して変わりません。一方で病床数は4倍以上あります。つまりそれだけ医師が分散してしまっています

なので、日本の医師は24時間働いた後もまだ働かないと仕事をこなせないのです。

この結果をもって、単純に医師が足りないから増やそうというのは根本原因に目をつぶったままなのです。

実は日本の医師数は毎年3500人~4500人ほど増えています。 つまり、10年前と比べると3万人~4万人以上は増えているということになります。

それでも、医師の業務が楽になったという実感はありません。益々多忙になってます。

これは専門分化が進んでいることや、人口高齢化などが原因ですが、全く病床の機能分化がうまくいっていないことが根本にあります。

国としては二次医療圏ごとに病床数を設定しているのでそれ以上増やさないようにしています。しかし、そもそも過剰なのですから、減らして集約化しないといけません

特に都会では病院を集約化させて減らすべきです。そうすると、都会で過剰になった医者は地方へ流れていきます。

民間病院を国が半強制的に減らすというのは難しいのですが、周囲に総合病院のある公立病院は減らすべきです。以前、以下のような記事を書きましたが、“公的な役割”が何かということを大局的にみて半強制的にやるべきです。

市立旭川病院は21年連続赤字で、税金の補填で生きながらえている状況です。医師らの給与削減という愚策で立て直しを図ってますが、経営計画を見るととても無理でしょう。そもそも存在意義もなく、さっさと統廃合するほうがよい理由を述べます。

単純に医師不足だと言って医師を増やそうという人は、痛みを伴うことはしたくないのでしょう。しかし、常勤医の待遇は悪く、大学医局の医員は正規の職員ですらなく、大学院生は無給医として奉公しなくてはいけない。

私はそんな医療システムから逃げた人間ですが、未来の医療のために常勤医の待遇を良くしていくべきです。制度設計をちゃんとしないと荒廃していくばかりです。

まとめ

医師の残業上限が2000時間という制度案が出ました。

そもそも、常勤医の待遇が悪く、非常に歪んだ医療システムになってます。今後数十年を考えたときに根本から造り替えていかないといけないといけないと思ってます。

医師数を増やすばかりでは効果は薄く、病院の集約化によって手厚く常勤医待遇をさせることが必要なことでしょう。

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